主な疾患としては、外傷以外に腱鞘炎、手根管症候群、関節リウマチ、変形性関節症などで疾患の種類や重症度などにおいてさまざまな患者さんが来られます。
関節病変では、リウマチを含めた膠原病より、加齢と共に関節の軟骨がすり減ることによる痛みと変形を生じる“変形性関節症”の割合が、近年著しく増えています。指先がゴツコツと変形する” へバーデン結節“ は女性に多く、60歳以上で50％に発生するといわれています。他の指の変形性関節症を合わせると90歳以上では95％の発症率との報告があります。しかしながら、手指関節病変の専門医は少なく、青森から沖縄まで遠方から頼ってきてくださる患者さんも多くいます。
“ これくらい大丈夫” と我慢を積み重ねると、重度の変形と痛みを引き起こし、日常生活の大きな妨げとなります。先ずは、ご自身の状態を知っていただくためにもお近くの手外科専門医にご相談ください。

患者さんご自身が感じる痛みのレベルをMAX で10とした時、４～５程度の痛みを感じるようになってきたら早めに専門医の受診をおすすめします。
痛みを我慢していると、疾患によっては日常生活が大きく制限されてくるものもあります。例えば、「ブシャール結節」と呼ばれる指の第二関節にみられる変形性関節症は、症状が進むと日常生活に大きく影響してきます。第二関節は指を握りこむ際に必ず必要な関節なので、日常の家事全般やペンやお箸をもつことすら難しくなります。
手はお母さんのお腹にいるときから、高齢になるまで人生の長い間必ず使い続けられる部分です。よく使われ続ける関節だからこそ変形が出やすく、痛みや変形で生活に支障が出る前に受診を検討していただきたいです。

変形が初期の場合であれば、手術以外の注射や装具、テーピングなど保存療法で治療を進めることができます。
すべての変形に対して最初から「手術」という選択肢ではなく、痛みや疾患の段階に応じた治療法を患者さんが納得したうえで進めていきます。
指関節はひざ関節や股関節に比べて小さな関節ではありますが、日常生活動作において常に使われている関節なので、加齢と共に変形しやすい関節でもあります。痛みや変形に対する治療法はありますが、加齢を止めることはできないからこそ、痛みや違和感に早めに気づくことが大切です。

人工関節手術とよく言われますが、正式名称は「人工関節置換術」と言います。
関節のつるつるとした軟骨が失われ、本来の機能が落ちた関節を人工関節に置き換える手術です。痛みの出る部分をインプラントに置き換えることで、痛みを確実にとることができるため、患者さんの満足度も非常に高い治療法です。
また当院で人工指関節置換術を受けられる場合、日帰り手術で可能です。手術時間も指関節１つあたり１時間とひざ関節や股関節に比べて短い時間で手術を行うことが可能です。「人工関節」と聞くととても大がかりな手術を想像されるため、ハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、麻酔で痛みなく、術後帰宅して夕食を取ることも可能な手術ですので、安心していただければと思います。

当院では手指専門の作業療法士“ハンドセラピスト”によってリハビリを進めていきます。手術前の動きの評価から術後のリハビリまで一貫して治療に寄り添います。医師と連携をとりながら患者さんにとってより効果的なリハビリを行うよう日々努めています。
術後6週間は週1～2回のリハビリを続けて、最長でも3か月程度あれば機能面の回復が見込めます。お仕事もデスクワークであれば2週間程度で復帰も可能です。まずは簡単な装具で固定し、少しずつ自分の動き(自動運動)からリハビリを進めていきます。可動域を確認しながら、ハンドセラピストによって他動運動を加えるなど患者さんの変形の進行度によって、回復の目標を設定しリハビリを進めていきます。

人工指関節自体も非常に優れてきており、一般的な日常生活の制限や、できないことは特にありません。
中学生で人工指関節手術を受けることになった患者さんもいらっしゃいましたが、野球を高校まで強豪校で続けて、現在も草野球チームで活動されています。
また、指関節はひざ関節や股関節と異なり、変形を衣服で隠すことが難しい関節です。
外観にお悩みの方が多くいらっしゃいますが、人工指関節置換術を受けられて、まっすぐな指に喜んでいただくことが多くあります。女性の患者さんの中には、気持ちが前向きになり、マニキュアなどを楽しまれる方が増えます。その姿は私自身の大きな励みにもなります。

患者さんのお話に耳を傾け、疾患や症状、治療方法などについてご納得いただけるよう心がけています。
患者さんの痛みの経緯や困りごとをしっかりとお聞きし、納得いただいたうえで前向きに治療を進めていただけるようにご説明をしています。
また当院はビルの中のクリニックですが、手術室は3室、手の外科の専門医6名にて日々治療にあたっています。専門の医師だけでなく、リハビリスタッフやナース、事務を含め全員がチームとして患者さんをサポートできるよう心がけています。