股関節や膝関節の痛みは必ずしも画像所見と一致しないことがあります。
また患者さんの中には「なるべく早く手術をしたい」という方も「なるべく手術をしたくない」という方も様々いらっしゃいます。丁寧に話を聞いて、患者さんの求めるものを理解し、それに適した治療方法を提示できるように心 がけています。

股関節の可動域や痛みの出る部位から痛みの原因を検索します。腰椎や膝関節、または内臓疾患に由来する股関節痛もありますので、正確な診断が必要です。
股関節由来の疼痛であると診断がついた場合は、まずはリハビリなどの運動療法や薬を使った保存治療から進めていきます。当院はリハビリスタッフ、設備ともに充実しており、患者さんの中には手術をしなくても症状の改善が見られる方もいらっしゃいます。保存治療で改善が見られない場合やよりアクティブに過ごしたいと望まれる方には、手術療法をおすすめしています。

「休みながらでないと15分歩けない」「股関節をかばうことで、膝や腰まで痛い」などの症状が出たら人工股関節置換術を検討されるべきタイミングかと思います。症状が出ていても、これくらいの痛みは大丈夫と手術を先延ばしにし てしまうと股関節だけでなく腰や膝など他の関節にも悪影響がでてきてしまいます。
また、単に年齢や画像所見から手術を判断するのではなく、痛みによって日常生活の困りごとが増えてきたら１つのタイミングかと思います。

一般的には「脱臼」「骨折」「感染症」の３つがあげられますが、当院では手術方法などで合併症リスクが低くなるよう尽力しています。
脱臼に関しては、「前方進入法(DAA アプローチ)」と言って筋肉を切らない手術方法を用いて人工股関節置換術を行っており、脱臼率は大変低くなっています。また術後３週以降は動作の制限はありません。
また、骨折については人工関節形状や執刀医の経験によってある程度回避することが可能です。当院では熟練した執刀医が、日本人の骨形態にあった人工関節を使用することで骨折のリスクは格段に低くなっています。
感染については、術前に血糖値のコントロールや禁煙などを厳密に行うことで、感染リスクを最小限にした状態で手術を行うようにしています。

人工股関節置換術は人工関節、手術方法ともに進歩しています。
以前は、人工関節の耐久性の観点から「人工関節置換術は60歳まで待つべきだ」と言われていました。しかし、現在では素材の進歩によって人工関節の耐久性が格段に向上しているため、一概に年齢だけで手術を先延ばしにする必要 はなくなってきています。また人工関節の進歩によって、術後早期の痛みが軽減され日常生活への復帰までの期間が短縮されるようになってきました。
さらに、筋肉を温存し、術後の動作制限のない術式で手術が行われるようになって、術後に多様なスポーツを楽しまれている方もたくさんいらっしゃいます。中にはプロスポーツの世界で活躍されている方もたくさんいらっしゃいます。 人工股関節置換術は「人生をより良くするための手術」ですから、術後はやりたいことをやってアクティブに人生をお過ごしいただきたいと思います。

手術後に『人生が変わった！』と涙を流されて喜んでいただいた患者さん方のことは、こちらももらい泣きしそうになり、大変印象に残っています。
ひざ関節に比べて、股関節は薬やリハビリなどで保存的に様子見をすることが難しい関節です。一方で「人工股関節置換術」は除痛効果にすぐれた安全性の高い治療法であり、患者さんの人生を前向きにしてくれるものだと思います。
現在、股関節痛に悩まれている患者さんがいらっしゃいましたら、 “ 今” を大切に、「人工股関節置換術」を検討されてみてはいかがでしょうか。